幼なじみ

主人公、晄は、寂れた神社を管理する家系の末裔。隣家に住む幼馴染みのあずさと結里奈。親友の颯真と共に、ほんの少しだけ将来の心配をしながら、日々を過ごしていた。夏休みの近づいたある日、晄のクラスに美羽が転校してくる。美羽は袋に収められた竹刀のようなものを手に夜中に徘徊をするなど、不可思議な行動をとっていた。偶然、それを見かけた晄は、美羽に直接尋ねてみた。「探し物をしているの。とても古い本よ。この街にあるかもしれないもの」その本は、晄の管理する神社の書庫にあったものだった。それを2人が手にする時。落雷とともに、世界の理が動き出す。 ▼もっとみる

矢部 虎太郎（やべ こたろう）。良く言えば優しい。悪く言えば気が弱い、どこにでもいる少年。名前負けにも程がある。それが彼の悩みの種。「やっぱり僕は、だめだなあ」それが彼の口癖だった。三上 晶（みかみ あきら）。人一倍気が強く、曲がった事が大嫌い。そして、その愛らしい容姿と堂々とした態度で、学園内の人気者。それゆえか、学生会執行部の会長も務める少女。とても背が低く華奢な体つきをしていながら、それに似合わない大きな胸が彼女の悩みの種だった。ネガティブな虎太郎と、ポジティブの代名詞的存在である晶。そんな二人が同じマンションに住む幼なじみから、恋人の仲にまで発展したのは、ほんの一ヶ月程前の事。以前からお互いに想い合っている事は、周知の事実。だから、晶の友人である須藤カナ（すどう かな）などは、よく二人の仲を茶化してきていた。それなのに、虎太郎だけは晶の気持ちに気付いておらず……。また、たとえ気付いていたとしても、自分に対する自信の無さ故に虎太郎からの告白など出来るはずもなく。結局焦れた晶が、虎太郎に告白してきたのだ。初めてのデートらしいデートで、幸せいっぱいの中、頬にキス。その後も、ふとしたきっかけで手をつないだり、お弁当を一緒に食べたりして、少しずつ恋人らしくなっていく二人。――だが、そんな幸せで穏やかな日々が一転し、二人は絶望の底へと叩き落とされてしまう。きっかけは、ある日の放課後の事。校門前でたむろしていた生徒の一団に対して、晶が会長としての注意を行ったのだ。相手は、品行が悪く他の学生達から恐れられている男達のリーダーである一ノ瀬 智哉（いちのせ ともや）。威嚇する一ノ瀬と、怯む素振りさえ見せずに渡り合う晶。そして、息を呑んで推移を見ている事しか出来ない虎太郎。その場は、教師である日向 紗英奈（ひゅうが さえな）が現れた事もあり、収まりを見せるのだが……。その出来事が後日、最悪の結果を生むこととなる。一緒に家路についていた二人の前に一ノ瀬達が現れ……。――晶は処女を散らされた。大好きな虎太郎の目の前で。――虎太郎は何もできなかった。大好きな彼女を守れなかったのだ。以来、その時撮った写真と動画をネタに、一ノ瀬の餌食となり続ける事を強要される晶。時を問わず、場所を問わず、ドス黒い欲望が彼女を焦がす。そんな彼女にとって何よりも耐え難いのは、その場に常に虎太郎が同席させられている事……そして、耐え難いのは虎太郎の方も同様だった。目の前で恋人が。恋人の目の前で。 ▼もっとみる